
この夏、大阪港を周航するサンタマリア号に乗った。
海風に乗って、コロンブスという言葉が、とても遠いところからやってきた。
古い友人に会ったみたいだった。古い時代に戻ったみたいだった。
サンタマリア号、新大陸発見、コロンブスの卵などの言葉が飛び出してきて、茶色に変色した古い本のページを開くようだった。
500年という歳月を遡る。
地球は球体である、と信じ始められた時代だ。西に進めば東端にたどりつく、とコロンブスは信じた。スペインの港から海を渡ればアジアの東端に着く。そこにあるのは、黄金の国ジパングだった。コロンブスはマルコ・ポーロの『東方見聞録』を読んでいた。金への欲望は強かった。
1492年8月3日、3隻の帆船と90人の乗組員とともに、彼はサンタマリア号で大西洋に乗り出した。
なかなか大地の東端には辿り着けなかった。日が経つにつれ、まだ地球が平面だと信じている水夫たちもいて、果てのない海を漂っているような不安にかられた彼らは、引き返すべく暴動を起こしかねなかった。
やっと流木などを発見したコロンブスは、陸地が近いことを確信し、水夫たちをなだめる。
2か月の航海ののち、一行はバハマ諸島のひとつの島に着く。のちにサン・サルバドル島と名付けられる島であり、これが新大陸の入口となった。